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「今年の夏休みバイト、リゾートバイトにしない?」
大学3年の夏、就活前最後の長期休みをどう使うか話していたとき、颯太がそう提案した。同じサークルの仲間、美緒と拓真も乗り気になった。山間の温泉旅館で、住み込みで1か月働くという求人だった。
「リゾートバイトって、あの有名な怖い話のやつだよね」美緒がスマホを見せながら言った。「2009年に『ホラーテラー』っていう投稿サイトに、日向麦って人が書いた話が元ネタで、あとで2ちゃんねるの洒落怖スレにも転載されたやつ」
「知ってる。大学3年生3人が旅館に泊まり込みで働いて、女将の様子がおかしくて、2階の秘密を調べたら、とんでもない真相があって……最後はお坊さんに助けられる、っていう話でしょ」拓真が笑った。「まさに俺たちと同じ状況じゃん」
「やめてよ、その話をしながら本当に行くの」
「大丈夫だって、作り話は作り話。むしろ縁起いいまである」
3人が向かった先は、実際に山間にある、昔ながらの温泉旅館だった。到着してすぐ、女将らしき年配の女性が出迎えてくれたが、颯太はふと、その女性がやけに自分たちを観察するような視線を向けていることに気づいた。
「気のせいだよ、颯太」
「そうかな。あの話のイメージが強すぎるだけかもしれないけど」
仕事は思ったよりハードだったが、特に変わったことは何も起きなかった。1週間が過ぎたころ、美緒が客室の清掃中に、2階の奥にある、普段は使われていないという一室に迷い込んだ。
「颯太、拓真、ちょっと来て」
美緒の声に呼ばれて行ってみると、そこは古い仏具や位牌が並んだ、小さな祈祷部屋だった。あの有名な話に出てくる「2階の秘密」を、思わず連想してしまう光景だった。
そこへ、女将が静かに現れた。3人は身構えたが、女将は困ったように微笑んだ。
「驚かせてごめんなさいね。ここ、うちの旅館で亡くなったお客さんたちを、代々弔ってきた部屋なんです。古い建物だから、そういうことも何度かあってね」
「怖い話とか、そういうんじゃないんですか」
颯太が思わず尋ねると、女将は少し笑って首を振った。
「怖い話にされることも多いけど、うちとしては、ただちゃんと供養したいだけなんですよ。だから、この部屋だけは、毎朝お坊さんに来てもらって、お経をあげてもらってるの」
そう言われて、颯太たちは初めて、毎朝どこからか聞こえていた読経の声の正体に気づいた。怖がっていたはずのものが、実はずっと、この旅館を静かに守っていたのだと分かった。
「なんだ、お坊さんに助けられるっていうの、本当にあったんだ」
拓真が笑いながら言うと、美緒も颯太も、つられて笑った。1か月のバイトを終えて帰る日、女将は3人に深々と頭を下げた。
「毎年、若い子たちがここで働いてくれるおかげで、この旅館も、ここで眠っている人たちも、寂しくないんですよ。また来年も、良かったら」
3人は顔を見合わせ、来年もまた来ようと約束して、山を下りた。
調査ノート:「リゾートバイト」という話の実際の初出
颯太たちの体験は完全な創作だが、彼らが話題にしていた「リゾートバイト」自体は、実際にネットで発表された怪談だ。
- 初出: 2009年、投稿サイト「ホラーテラー」に、日向麦氏が投稿した作品とされる。Wayback Machineで2009年10月4日時点の投稿記録が確認されている
- 2ちゃんねるへの転載: その後、2ちゃんねるオカルト板の「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」(通称・洒落怖)スレッドにも転載され、広く知られるようになった
- 原話のあらすじ: 大学3年生の主人公と友人2人が、山間の旅館にリゾートバイトとして泊まり込みで働く。女将の不審な行動をきっかけに、2階にまつわる秘密を調べることになり、恐怖の真相に直面するが、最終的には僧侶に救われる、という筋書きとされる
- 作品としての特徴: 幽霊や超常現象そのものよりも、人間の心理的な弱さを突く構成で怖さを作り出している点が、この作品の評価されている点とされる
- 映画化: 2023年10月20日、永江二朗監督により映画化。『真・鮫島事件』『きさらぎ駅』に続く「ネット都市伝説3部作」の最終章として公開された
出典・参考文献: シネマトゥデイ「伝説のネット怪談!映画『リゾートバイト』が予想を超えてきた!」cinematoday.jp / じゃぱり書庫「2ch怪談『リゾートバイト』について」ilapaj.com(いずれも2026年8月時点でWeb上で内容を確認。原話の投稿サイト「ホラーテラー」自体は既に閲覧困難なため、内容は上記の解説記事の要約に基づく)
山間の宿でのバイトや旅行は、電波が不安定になりがちで、スマホの充電切れがそのまま不安要素になる。以前の記事でモバイルバッテリーを比較したので、気になる方はチェックしてほしい。
このお話はフィクションです。「リゾートバイト」という話が2009年に実際に発表された経緯、2ちゃんねるへの転載・映画化等の展開は上記の出典に基づく事実ですが、本記事に登場する颯太・美緒・拓真という大学生3人とその体験談、旅館の女将とのやり取りはすべて筆者による完全な創作であり、実際に起きた出来事ではありません。原話の作者・投稿者本人の特定・詮索は行っておらず、本記事の登場人物も実在するいかなる個人とも無関係です。
アイキャッチ画像: “Hoshi Ryokan” by Namazu-tron, CC BY-SA 3.0(出典)。※石川県・粟津温泉の実在の旅館で、記事本文の旅館とは無関係です(雰囲気を伝えるためのイメージ画像です)。